アトピー性皮膚炎とは?
アトピーという名称の語源は「特定されていない」「奇妙な」という意味のギリシャ語「アトポス」に由来しています。
具体的には、痒みの強い慢性化しやすい湿疹が顔面や体の関節部など柔らかいところに出やすく、増悪や寛解を繰り返す疾患です。
主に小児期に発症し、成人までに軽快することもありますが成人になっても重症化することもあります。
西洋医学の視点から
<原因>
原因は未だに不明な点が多く、一般的に環境中のダニや食べ物などの成分が原因物質となりそれらに対する免疫グロブリンE抗体が体中に以上に大量産出されて皮膚に炎症を誘発しているとされています。
小児では、主に卵、牛乳、穀物類などの食物が原因となることが多いです。他に犬や猫などのペットのフケや毛、体内や皮膚の表面に棲んでいる真菌などもアレルゲンになり得る物質です。
また、皮膚のバリア機能障害や免疫調節機能の障害など重要視されており、冬の乾燥や夏の発汗、衣類などの刺激に対して皮膚が耐えられなく、炎症を起こしやすい状態に陥ります。
また、炎症を起こした皮膚の表面に細菌が増殖することでさらに症状が悪化するケースもすくなくはありません。
他にも、寝不足やストレスなど精神的な要因も考慮しなければなりません。
以上のように、体質的な要因や環境要因、生活動作やストレスなどの精神的な要因などが複雑に関与することで、アトピー性皮膚炎の発症につながると考えられています。
<西洋医学的治療法>
残念ながら現在の段階でアトピー性皮膚炎の根本的な治療法は確立されていません。
基本的にはステロイド外用薬で炎症を抑制し、保湿目的でワセリンや消炎剤と併用することによる対処療法が中心となります。
ステロイドは副腎皮質から自然に分泌されるホルモンの一種で、それを外用薬として一時人工的に補うことで症状を楽にしていますが、反面長期間大量に使用すると副腎皮質が機能低下を起こし色素沈着などの皮膚症状や緑内障を起こしたりという副作用もあるため、使用量に注意した方が望ましいです。
しかし、ステロイドは現時点でアトピー性皮膚炎の症状を鎮静させる薬としてその有効性と安全性が証明されています。
薬を使用しながら徐々に量を減らしていき上手に症状をコントロールしながら病気と共存していくという考え方なのです。
また、東洋医学的な漢方や鍼灸治療と併用することで相乗効果が期待できます。
<西洋医学的予防>
アレルギー症状を起こす原因となる物質は、ダニ、ダニの死骸、ペットの毛やフケ、チリ、ほこり、カビ、花粉、食物など数多くあり、人によって異なります。
検査をしても、原因がはっきりわからないこともあれば、逆に、どのアレルゲンにも反応が高く、原因の特定が難しい場合もあるかもしれません。
ただし、原因がわかっている場合はできるだけ除去する努力や工夫をする必要があります。
こまめな部屋の掃除や、布団を日光に当てることでほこりやカビ、ダニなどを除去し、皮膚への刺激を減らすことが出来るよう家庭環境を整えるのが具体的な方法です。
ただし、日常生活のなかでほこりやダニを完全に排除することはかなり難しいでしょう。
ストレスを抱えるほど神経質になるのではなく、より清潔な環境を心がける意識が大切なのです。
東洋医学の視点から
<原因>
東洋医学では身体を流れる水分や熱といったエネルギーの循環が、外からの要因やストレスなどによって澱み、体によくないものに変わることで引き起こされていると考えられています。
五臓のうち特に食物を消化し水分を作り出す脾と、気と水分を全身や皮膚に行き渡らせる肺の機能が侵されることにより皮膚に水分や栄養ががうまく行き渡らず、皮膚の下に熱が籠もってしまい発赤やかゆみが現れるというわけです。
<東洋医学的治療法>
アトピー性皮膚炎の東洋医学的な原因として、気や血や、水分といった体内物質の乱れが考えられます。
たとえばエネルギー不足の状態である「気虚」、気虚から熱が発生する「虚熱」、血の滞りからくる「瘀血」、本来代謝され排出されるはずの水分が体内に留まってしまう「水毒」など様々にあるため、根本的な原因となる「証」の診断が重要なポイントとなります。
鍼灸治療はとくに自律神経系に働きかけ体の循環を良くすることで気血津液の循環を整えることでアレルギー症状を緩和する働きがあります。
普通、アトピー性皮膚炎の患者さんを診察する際、まず考えられるのは、先天的な「気」(エネルギー)の不足によるものがどうか。遺伝的な要因も絡んでくることもありますので対処することがやや難しいです。
次に、後天的な「気」の不足によるものかの見極めで東洋医学の本領が発揮されます。後天的な「気」の不足を招く大きな原因として挙げられるのが胃腸機能が弱くなってしうことです。
胃腸機能が弱ると飲食物から栄養が作ることが出来ず、つまり外部よりエネルギーの補給がうまくできず、結局、全身への「血」や「水」の運行が悪くなることで、皮膚の乾燥またはジクジクとした状態を誘発します。
つまり簡単に言えば、食事の食べる量が少なかったり、また消化器系の機能低下から消化・吸収に問題があるために、上手にエネルギーを作ることができなってしまいます。
鍼灸施術にしても漢方処方にしても、常に患者の胃腸状況や消化機能全般を意識しながらアプローチして行くことが大事なのです。
<東洋医学的予防>
アトピー性皮膚炎の外因として、西洋医学的には花粉やハウスダスト、高温・多湿、紫外線など、さらには、不摂生や生活環境、細菌感染まで色々言われていますがこれらは全て東洋医学の外からの邪気、いわゆる六淫(風・寒・暑・湿・熱・燥邪)に当てはめられます。
季節ごとに体調を整えることで症状の発生を抑えることが予防となります。
まとめ
このように原因は不明なものも多く、現在のところ対処療法が主流になっています。
ただ、根本治療をする東洋医学を併用することで症状の緩和や予防に大いに効果があると考えられます。