バセドウ病(グレーブス病)とは?
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることにより代謝亢進や自律神経が影響され、様々な臓器に関係する病態である。
甲状腺の機能として活動に必要なエネルギーをつくり今までの細胞を新しい細胞に変え、体全体の新陳代謝に関わり成長と機能の維持するために、甲状腺ホルモンを作る働きがある。
この甲状腺ホルモンが無くなると1~2か月ぐらいしか生きられないと言われるほど必要不可欠なホルモンである。
その甲状腺ホルモンが亢進した病気の1つとしてバセドウ病というものがある。
甲状腺の疾患は遺伝的な要因も関係している。
~症状~
メルセブルグの三微(甲状腺線腫、眼球突出、心悸亢進)
の他に、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるので、全身の新陳代謝が亢進する。
そのため息切れ、手足の震え、疲れやすさを感じたり、だるさなどさまざまな全身症状が起こる。
食欲旺盛でたくさん食べるのに体重が減り(高齢になると食欲増加はなく体重減少のみ)、代謝が上がり暑がりになり、頻脈、発汗過多になる。
精神的には不安定になりやすく不眠になりやすい。
手が震えて字が書きにくくなり、ときどき手足の力が入らなくなる(周期性四肢麻痺)ことやイライラして怒りっぽくなり、排便の回数が増す。
大きさに違いはあるが、軟らかいびまん性の甲状腺腫が認められる。
放置してしまうと、心不全など命に関わることもあり適切な治療を受けることが大切である。
~好発~
20~40歳代に発症することが多く、
男女の比率は男性1人に対して女性5~6人程度と女性に多くみられる自己免疫疾患の1つである。
さらに、若い人は症状が出やすく、中年を過ぎると出にくくなる。
西洋医学の視点から
<原因>
バセドウ病の原因は不明だが、甲状腺ホルモンによる自己免疫疾患の1つであると考えられている。
甲状腺ホルモンは、TSH(脳のから分泌される甲状腺を刺激するホルモン)が甲状腺の細胞表面にある甲状腺ホルモン受容体(レセプター)に結合することで刺激を受け、分泌されます。
甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンではないのに、同じように甲状腺ホルモン受容体を刺激する蛋白質(抗甲状腺受容体抗体)が出来てしまい、甲状腺ホルモンが多く分泌されてしまう。
そのため免疫の働きが乱れ、体内の正常な組織まで攻撃してしまう。
つまり、TSH受容体に対する抗TSH受容体抗体によって甲状腺が過剰に刺激されて発生する自己免疫疾患である。
<西洋医学的治療>
まず、検査を行う。
触診で甲状腺の腫れを確認し、甲状腺機能亢進症は甲状腺ホルモン(遊離チロキシン)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測定することで、診断し、さらにバセドウ病であることを確認するために、原因物質であるTSHレセプター抗体(TRAb)を測定する。
他にも、甲状腺ホルモンの分泌が多いと心臓に負担がかかる可能性もあり、必要に応じて心電図や胸部レントゲン検査を行う。
また、眼球突出による視力低下の可能性が考えられる場合は、眼窩CT検査やMRI検査をすることもある。
○バセドウ病の治療法は大きく分けて3つある。
内服療法(抗甲状腺薬治療)
外科療法(手術)
放射性ヨード内服療法(アイソトープ治療)である。
まず、初めは抗甲状腺薬治療を行う。
●抗甲状腺薬治療
まず、甲状腺ホルモンの働きを抑える薬物療法を行う。
甲状腺ホルモンのバランスや症状を見ながら適切に薬を減らし、1~3ヶ月程度(個人差あり)で甲状腺ホルモンの数値が正常に近づき、症状が治まることが多い。
短くても2年程度は薬を続ける。
薬をやめた後の再発率が高くなるので、症状が現れなくなっても薬を継続する必要がある。
甲状腺の機能がきちんと保たれるようになれば薬を中止出来る可能性もある。
●手術
手術によって大きく腫れた甲状腺を摘出する手術療法である。
●放射性ヨード内服療法
放射性ヨードをカプセルに入れて内服します。
放射性ヨードは甲状腺にとりこまれ、大きくなりすぎた甲状腺を放射線で焼いて甲状腺の機能を抑える。
外来で治療できますが、妊娠の可能性のある女性には使用不可になる。
薬のアレルギーがある患者にも使用可能、内服療法ができない患者でも治療が出来き、手術後の再発などにも有効である。
どの治療法であれ、甲状腺ホルモンの分泌が調整出来れば、不自由ない日常生活を送ることができ、妊娠・出産も可能である。
<予防>
遺伝的要因もあるが、ストレスを溜めないことや喫煙である。特に喫煙は内服療法の効果を弱めてしまうため控える。
東洋医学の視点から
<原因>
日常的にイライラし怒りやすかったり、気が塞ぎがちになったり悩み事や考え事があったりすると気の流れが滞る。
そのためイライラして眠れない、筋を養うことが出来ずに手足が震える。気が鬱滞すると津液が凝り、全身の倦怠感を感じやすくなると考えられる。
<東洋医学的治療>
肝の疏泄機能の障害によって起り、自律神経系の過緊張が主となる。肝の陰液が不足し、陰が陽を制することができず、陰が少なくて陽が亢進した状態であると考えられる。
肝陰を補い、気鬱の改善のために肝兪、太衝、膻中、気海などのツボを取穴する。
<予防>
マッサージや適度な運動をストレスを緩和することで気鬱な状態を避け気の滞りを防ぎ全身をスムーズに巡ると考える。
まとめ
バセドウ病の直接的な原因は解明されていないが、ストレスが悪化する要因の1つである。
まずは甲状腺ホルモンをコントロールする必要がある。そして、少しでもストレスを緩和するために体を動かし、自律神経を整えたり、体調管理もしっかり行うことも大切であると考えられる。