副鼻腔炎とは?
副鼻腔の炎症疾患を総称したもので、急性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、アレルギー性鼻・副鼻腔炎に分類される。
~副鼻腔とは?~
副鼻腔は、顔の中央にある鼻腔(びくう)を取り巻くように存在する空洞で、額の奥の前頭洞(ぜんとうどう)、鼻腔の後上方で頭蓋底(ずがいてい)にある蝶形骨洞、両眼の間の篩骨洞(しこつどう)、頬の奥の上顎洞(じょうがくどう)を総称して副鼻腔という。
~副鼻腔の役割~
鼻腔の中央部より前方には各副鼻腔の中鼻道への開口部が存在していることから、鼻腔における加湿効果に副鼻腔からの粘液の供給が一翼を担っている。
副鼻腔の自然孔はきわめて小さいため鼻腔に侵入した吸気の副鼻腔への影響は少ない。
鼻腔に吸入された種々の条件の吸気に鼻腔の粘液層が影響を受けても、副鼻腔は外界の影響を受けず、副鼻腔からの新鮮な粘液が鼻腔に補給される。
西洋医学の視点から
従来の細菌感染を主体とした副鼻腔炎は軽症化あるいは減少しているが、アレルギー性鼻炎患者においてアレルギー性鼻・副鼻腔炎の存在が多くなっている。
特に、好酸球性副鼻腔炎は増加中である。
これは喘息と関連があり、かつて、喘息の治療はステロイドの内服が一般的だったが、副作用が強く、ステロイドの吸入へと変わっていった。
これと時を同じくして増えてきたのが、好酸球性副鼻腔炎なので、吸入では、薬は喉のほうにはいくものの、鼻のほうにはいかないため、ステロイドの内服で抑えられていた鼻の症状が、好酸球性副鼻腔炎という形で現れたと考えられる。
<原因>
副鼻腔には上顎洞、篩骨洞、蝶形骨洞、前頭洞が存在するが、副鼻腔では副鼻腔ではこれらの一部あるいは全部に炎症を生じる。
急性副鼻腔炎は、多くの場合、急性鼻炎・上気道炎に続いて発症し、膿性鼻漏、鼻閉の他、頬部痛、歯痛、頭痛などの症状を伴う。
慢性副鼻腔炎では、副鼻腔粘膜に浮腫や線維化による肥厚があり、副鼻腔自然口を介した自然治癒過程の障害と炎症の慢性化が生じている。
副鼻腔は虫歯や歯周病から起こることもある。
歯根が副鼻腔の一つである上顎洞のすぐ近くまで達しているため、虫歯や歯周病を放置していると、その炎症が上顎洞に伝わり、「歯性上顎洞炎」という副鼻腔炎を発症する。
インプラントによって発症することもある。
~症状~
鼻漏(びろう)、鼻閉(びへい)、嗅覚障害、頭痛、頭重感、頰部痛、発熱などがある。
~診断~
鼻内所見として粘膜の腫脹と色調の変化、中鼻道に分泌物貯留がり、X線検査所見、細菌学的検査、アレルギー検査などで診断する。
<西洋医学的治療>
急性副鼻腔炎には、抗菌薬、粘液溶解薬、消炎酵素薬を加えた薬物療法が大切であり、これに局所療法を組み合わせて治療する。
慢性副鼻腔炎の治療には、薬物、局所療法、手術を適宜組み合わせて行う。
最近では内視鏡下鼻内手術が行われ、副鼻腔の粘膜を保存しながら、より生理的な状態での治癒を目指し、手術に伴う患者の負担は軽減している。
好酸球性副鼻腔炎は、通常の慢性副鼻腔炎で処方される薬では効かないため、ステロイドを内服するしかなく、それでも治らない場合は手術となる。
<予防>
①バランスの取れた食事と規則正しい生活、十分な休養と睡眠。
②お酒を控える。
お酒を飲むと血行が良くなり、よけいに鼻がつまりやすくなります。
③鼻洗浄を試してみる。
④市販の点鼻薬は使い続けない。
鼻づまりを解消するための血管収縮薬は、何度も使っているとだんだん効かなくなり、鼻の粘膜が腫れてくる。
<東洋医学の視点から>
<原因>
東洋医学では鼻閉、生臭い鼻汁、嗅覚減退を主症とする病証を鼻淵(びえん)と称する。
①肝胆(かんたん)の鬱熱(うつねつ)による鼻淵
平素から辛いものを偏食したり飲酒の習慣がある人は、湿熱(しつねつ)が体内にこもりやすい。
また情志失調(じょうししっちょう)により肝胆の疏泄(そせつ)機能が失調すると、気が鬱し化熱するものもある。
古人はこれが肝胆の鬱熱となり脳を犯し、脳汁が漏れると鼻淵が起こるとしている。
②脾経の湿熱による鼻淵
平素から甘いものや油っこいものを偏食していると体内に湿熱がこもりやすく、この湿熱は脾胃(ひい)に影響しやすい。
このために脾の運化機能(うんかきのう)が悪くなり、清気(せいき)が昇らず濁陰(だくいん)が降りなくなり、湿熱が陽明経脈(ようめいけいみゃく)にそって鼻に影響すると鼻淵が起こる。
③肺気虚(はいききょ)による鼻淵
いろいろな原因により肺気虚となり、そのために衛外(えがい)機能が低下すると、外邪(がいじゃ)を受けやすくなり感冒(かんぼう)にもかかりやすくなる。
また肺気が不足していると、その治節(ちせつ)機能も悪くなり、邪毒(じゃどく)が停滞しやすくなり、それが鼻に影響すると鼻淵が起こる。
④脾気虚(ひききょ)による鼻淵
飲食不節(いんしょくふせつ)や過労、思慮過度などにより脾胃を損傷し、そのために気血(きけつ)の生成が不足し、また清陽(せいよう)が頭顔面部に昇らず、鼻が気血の栄養を充分に受けられないと邪毒が停滞して鼻淵が起こる。
<東洋医学的治療>
ツボは、上星(じょうせい)や迎香(げいこう)を使う。
人差し指や中指、親指などで、ツボを3秒かけて押して行き、3秒間は圧したままにして、3秒かけて力を抜いて行く、というのを10回繰り返す。
このツボ押しを1日のなかで、気付いたときに行うよう習慣づける。
<予防>
副鼻腔炎を予防するには、風邪を引かないようにすること。そのためには、
①ふだんからバランスの取れた食事
バランスの取れた食事とは、食の三原則【適応食、身土不二(しんどふじ)、一物全体食(いちぶつぜんたいしょく)】を守った食事です。
適応食:日本人に適した、米(特に玄米)を中心とする穀物や野菜中心の日本の伝統食。
身土不二:じぶんの住む土地で取れた旬のものを食べること。
一物全体食:食物は全体でひとつの命、それを丸ごと食べること。
②規則正しい生活
気持ちがわくわくできる価値観を持ち、自然のサイクルに合わせた生活をしましょう。
また、規則正しい生活ができない日があっても、じぶんを責めたりせず、気付いた今、この瞬間から努力しよう!と心を切り替えましょう。
③乾布摩擦
主に上半身の上胸背部を乾布摩擦して、気を外に発散させ、気の停滞を改善する。
まとめ
副鼻腔炎は一度なってしまうとなかなか直りづらく、非常に不快感を伴う疾患です。
ひどくなると発熱や寝れない程の頭重感や圧迫感に悩まされます。
西洋医学ではなかなか治りにくい病気ですが、東洋医学ではある程度の成果もあるようです。
また、ならないように予防に気を付けてみるのも一考かと思います。