脳梗塞とは?
脳梗塞とは、脳卒中の中の一つで脳の血管が突然詰まり血流が途絶えることで脳の神経細胞が死んでしまう病気。
脳の細胞は、突然血流が止まると数時間以内に完全に死んでしまい、再生は困難なため、一旦脳梗塞を起こすと重大な後遺症が残ったり、生命に関わることもある。
脳梗塞には脳塞栓と脳血栓の2種類があり、脳塞栓とは心臓弁膜症、不整脈などで血流の流れが悪くなりできた血栓が脳まで流れてきた血管を塞いだ状態。
脳血栓は脳の動脈が硬くなり動脈硬化が進むと、血管が狭くなる事で血液の流れが悪くなり固まりやすなる。
そうした状態が進むと血栓ができ血管内を塞いでしまう事。
~症状~
脳梗塞には一過性脳虚血発作という予兆があり、これに十分注意することが大切になる。
一過性脳虚血発作は短くて数分、長くても30分程度で治る。
症状は急に言葉が出なくなる失語症やろれつが回らなくなってしまう構音障害が代表的である。
また何も原因がないのに顔が歪む片側顔面麻痺、片方の視力が急激に低下する一過性黒内障や視界の半分が見えなくなること、両手を持ち上げようとしても片腕だけ上がらない症状もある。
脳梗塞の予兆は脳血管が血栓によって一時的に詰まる事で起こるため、完全に詰まったわけではないので上記のように数分で治るがすぐに診察を受けた方が良い。
一過性脳虚血発作が起こると約5%~20%の人に発症すると言われている。脳梗塞が起こると、右半身か左半身のいずれに運動麻痺が起きたり、言葉がうまく話せなくなったり、意識がはっきりしなくなったりし後遺症が残ることも多く日常生活に手助けが必要となる。
しかし脳梗塞の症状は人それぞれで違い程度も違う。
運動麻痺などの他に記憶障害や性格、人格が変化したり、計算ができなくなったりなどの症状もある。
また脳梗塞の種類によって症状も違ってくる。
①ラクナ梗塞
脳のどの部位に発生するかによって違いはあるが、場所によっては無自覚であり無症状である。
よってラクナ梗塞は「無症性脳梗塞」とも呼ばれている。足の麻痺や痺れ、眼の障害などが起こる。
②アテローム血栓性梗塞
右半身もしくは左半身の麻痺である「片麻痺」や声を出すことが困難な「構音障害」などを引き起こす。
また、物事を正しく理解したり、周囲の刺激に対する適切な反応が損なわれるなど、認知面や精神面に問題が発生することもあり、文字が書けない、計算ができないなどの症状や、「半側空間無視」と呼ばれる左右がわからなくなる症状、衣服が着られない、性格や人格が変わってしまうなど様々な障害が見られる。
③心原性脳塞栓症
最も恐ろしい脳梗塞と言われている。
広範囲に血流が途絶えてしまうため、強い麻痺や感覚障害が起こる場合が多く、アテローム血栓性梗塞と同様の症状の他に意識障害も強くなる場合がある。
また、呼吸など生命維持に必要な脳幹部で梗塞が起き細胞や神経が損傷されると命に危険が及ぶ。
また、脳梗塞は東洋医学的視点においても西洋医学的視点と症状に大きな違いはない。
西洋医学の視点から
<原因>
脳梗塞の大きな原因としては、動脈硬化が挙げられる。
動脈硬化とは加齢に伴ってしなやかさを失い硬くなった血管に、コレステロールや脂質でドロドロになった血液が付着して血管が細くなったり、血液の流れが悪い状態を指す。
健康な血管であれば血液であれば留まる事なく流れていくが、動脈硬化によって血管内に血流が滞る場所ができると、そこで血液が固まりやすくなり血栓ができてしまう。
こうした脳の血管内に作られた血栓や、心臓から運ばれた血栓が脳の血管を
塞いでしまう事で脳梗塞が引き起こされる。
動脈硬化が起きる主な要因としては悪玉コレステロールがよくあげられるが、それに加えて、高脂血症、高血圧、糖尿、心臓病といった疾患や肥満、喫煙、飲酒などで日常の生活習慣ともに密接に関わっている。
また若い方でも生まれ持った体質や後天的に得た何らかの異常が脳梗塞を起こしてしまう可能性もあるため、家族や血縁者に脳卒中の多い人、原因不明になった人がいる場合は専門的に精密検査をした方が良い。
<西洋医学的治療>
脳梗塞の治療は薬物療法、手術、リハビリテーションがある。ただ脳梗塞の種類によって治療法が異なる。
①ラクナ梗塞
薬物療法では抗血小板剤を使用。
なおこの病態は高血圧との関連が深く、降圧剤が重要な役割をはたす。
②アテローム血栓症
薬物療法では抗血小板剤、血液が固まらないようにするための抗凝固剤、血栓溶解薬を使用。
また同時に生活習慣病の治療を行う。
手術療法では血管吻合術、頚部内頸動脈内膜剥離術を行う。
③心原性脳塞栓症
薬物療法では抗凝固剤、血栓溶解薬を使用。
手術療法では血栓溶解療法を行う。
全ての病態にて、死に陥った脳細胞から放出される活性酵素が周りの生きている脳に悪さをすると言われており、この活性酵素を除去するため脳保護剤というものを使用。
また、リハビリでは急性期、回復期、生活期に分けられる。
急性期のリハビリは基本的に発症から48時間以内に開始することが望ましいとされていて、身体機能の低下防止を目的としている。
寝たきりの期間が長くなると廃用性症候群に陥ってしまう。
そのためできるだけ早くリハビリを行うことが必要。
廃用性症候群にならないためには座る、立つなどの離床訓練を行い、日常生活に必要な動作をできるようにするADL訓練も進める。
また物を飲み込むことができない場合は摂食・嚥下訓練を行う。
運動麻痺、言語障害、高次脳機能障害がある方に対してはそれぞれ適切に症状に合わせたリハビリを行う。
急性期には、脳の血流を改善する事である程度の麻痺は改善。
回復期のリハビリでは症状の改善に加え、復職の訓練を行うなどさらに生活機能を高めるための訓練が行われる。
現在ではボツリヌス療法や磁気・電気刺激療法、ロボットリハビリなどが行われている。
生活期のリハビリは基本的には自宅や施設で行われ、回復期の段階で環境を整え、自立した生活を行えるようにまた生活範囲を広げるリハビリを行う。
リハビリにおいて大切なのは人間の脳は使わないと衰えるという特性があるため、麻痺の有無に関わらずバランスよく鍛えることが重要。
<予防>
脳梗塞の予防には生活習慣を見直し、バランスの良い食生活や日々の運動を心掛ける必要がある。
また高血圧や糖尿病、高脂血症、心房細動など持病がある方は適切な治療行うことが大切である。また喫煙、飲み過ぎ、過労、ストレス、睡眠不足はできるだけ避けることが必要。
現在では小さな異変を発見するため脳ドッグというものも存在するので定期的に検査を行い、早期発見、早期治療を行う事で予後に大きく影響してくる。
東洋医学の視点から
<原因>
生命は陰と陽が助け合って成り立っている。
脳梗塞はこの陰と陽が同時に病み、そして、それに加え陰が弱まり陽が亢進する陰虚陽亢という状態になると脳梗塞になる。
さらにここで言う陰虚はただの陰虚ではなくこれに気の不足、つまり気虚という背景もあるため、体のエネルギーが不足しているため大変危険な状態となる。
こうなると陽亢はさらに激しさを増すため、体の中で台風のような強風を巻き起こし、痰湿・瘀血を持ち上げ正常な脳つまり清空を侵す。
この台風は条件が整うことで発生する。歳を重ねれば体は弱まる。
それでも元気な方は多いが本当に健康な方と気だけが多い人と二通りの方がいる。
気だけが多い人はエネルギーを消費し続けている状態。
体的には無理をし続けているため気陰の弱りを生む。本人は自覚がないため興奮状態が続き、食欲も衰えず、ストレスがあっても緩和せず、悪循環となる。
興奮による機能亢進は必要以上に食べ過ぎを生み、痰湿を形成。ストレスは緊張を生み、緊張は熱を生み、熱は興奮を生み、興奮は強風を起こす。
また、ストレスは気滞を形成し瘀血を生む。これで条件が整う。
<東洋医学的治療>
中医学では、まず血液を治療し血液の流れを良くすれば自然に消滅すると言われている。
つまり、治療で重要なのは瘀血を治すこと。これを活血化瘀という。この治療を行えば、動脈硬化や脳血栓も予防することができる。
また、中風七穴といって、
第1説(百会、肩井、曲池、足三里、曲鬢、風市、懸鐘)、
第2説(百会、肩井、曲池、足三里、大椎、風池、間使)
を用いて治療する。
<予防>
予防に関しては西洋医学的視点と大きな違いはないが、原因でも述べたようにストレスが重要な要素にもなっているため、無理な食事制限や運動療法はお勧めしない。
そして、日々興奮状態をクールダウンし、気を休めること。
無理なく継続できる程度且つリラックスする時間を作るよう努めることが大切である。
まとめ
この様に、脳梗塞は緊急性を要する重大な疾患です。
また、死亡する場合や病後の予後も後遺症が残りやすいなど、非常に怖い疾患でもあります。
ただ、脳梗塞は生活習慣やストレスが主な原因ですので、生活改善や日々のストレスを改善する事で予防することが重要になってきます。
他にも、予防方法として鍼灸治療による未病治も効果的ですので、予防や病後の治療においては非常に良いと考えられます。