花粉症とは?
春先にピークを迎える花粉症。
医学用語では、「季節性アレルギー性鼻炎」と言い、花粉症の原因となる花粉は、スギ花粉、ヒノキ花粉、ブタクサ花粉をはじめ、1年中飛散しており、季節を問わず一年中症状に悩まされる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
日本において花粉症を有する正確な人数は不明ですが、おおよそ四人に一人の割合で発症されているといわれており、全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした鼻アレルギーの全国疫学調査では、アレルギー性鼻炎全体において1998年と2019年を比較すると約20%近く増加し、花粉症全体では、約23%近くも増加傾向にあるようです。
花粉症は、主にくしゃみ、鼻水、鼻づまりが起こるアレルギー鼻炎タイプと目のかゆみ、充血、涙目などが起こるアレルギー結膜炎タイプがあります。
その他に喉の痒みやいがらっぽっさ、息苦しさ、肌荒れの他、長期間に渡る鼻づまりで副鼻腔炎や頭痛などの症状も現れる人もいます。
そして、実はこの花粉症、日本人だけのお悩みではないのです。
世界で初めて花粉症という疾患を認識したイギリスでも罹患率が20%、オーストラリアでは26%と言われており、フランス、スペイン、イタリア、ロシアなどでも国民病の一つとなっています。
いずれも先進国に発症者が多いのが特徴であるともいえる花粉症について西洋医学的視点と東洋医学的視点でお伝えしたいと思います。
西洋医学的視点から
<原因>
花粉症の原因は、体に害を及ぼす異物が入ってくると、その異物を攻撃して体の外に追い出そうとする免疫システムの一種で、体が花粉を害のある異物だと判断した結果によるアレルギー反応です。
くしゃみ・鼻みずはなどの症状の場合、鼻の粘膜にあるマスト細胞からヒスタミンなどの化学物質が放出されることで、神経を刺激し花粉を追い出そうとする働きによるものです。
鼻づまり症状の場合は、マスト細胞から放出されるロイコトリエンなどの化学物質が、血管を刺激することによって起こり、鼻の粘膜の血管が広がったり、粘膜が腫れたりするために、鼻がつまります。
咳や喉のいがらっぽさや息苦しさなどの症状も鼻の粘膜と同様に気管の過敏性が高まり、咳がでたり、気管の腫れが生じます。目のかゆみは、花粉が目の粘膜に付着し、アレルギー性結膜炎を起こすことで生じます。
かゆみのほかに、目の充血やごろごろとした異物感、涙目、目やになどの症状も出ることがあります。
また、皮膚には外からの異物の侵入を防ぐバリア機能は、肌の乾燥などでバリア機能が低下すると、アレルゲンである花粉が侵入しやすくなり、赤み、かゆみ、ピリピリする感じなどの肌荒れが現れる花粉皮膚炎の原因となります。
アレルギー反応で放出される種々の化学物質やサイトカインの影響で頭重感や倦怠感がでることもあるので、花粉症の時期の頭痛や頭の重い感じは、花粉症の症状かもしれません。
また、どんなものにアレルギーを起こしやすい体質なのかをアレルギー検査することは、アレルゲンを特定することが出来るため、的確な予防対策や治療法をしやすくなりアレルギー症状の緩和に役立ちます。
<西洋医学的治療>
花粉症の治療法には、点眼薬、点鼻薬などによる局所への薬物療法や内服薬などによる全身療法、レーザーなどによる手術療法などの対処療法と舌下免疫療法やアレルゲン免疫療法(減感作療法)などの根本療法があります。
くしゃみ・鼻みずと、鼻づまりでは、症状を引き起こす主な原因物質が異なるため、効果が期待できる薬のタイプや症状の組合せや重症度によって治療法も変わってくる為、きちんとお医者さんからの指導や薬剤師さんのアドバイスをもらいましょう。
<予防>
物理的に花粉をシャットダウンさせる工夫の他に花粉症の季節がやってくる前に抗アレルギー作用のある鼻炎薬を服用したり、アレルゲン免疫療法で抗体をつくることで症状がひどくなってから対応するよりも、花粉症の進行を遅らせることが出来るので症状が軽くすみます。
東洋医学的視点から
<原因>
東洋医学では、各々の臓腑が循環、抑制のバランスを相互依存で成り立っていると考え、外因=環境は、病気の条件であり、内因=心身は病気の原因と捉えています。
花粉症の場合、症状が現れる臓腑には肝・脾・肺が関係していると考えます。
肝は、上に向かうエネルギーで春という季節と目に関わる臓腑で全身の気や血を流す作用(疏泄作用)や血を蓄える(蔵血作用)、血を貯めて各臓腑へ血量を調節する役割を持っています。
肝は感情によって機能が亢進又は低下します。
つまり、肝が正常に活動していれば全身をくまなく気が行きわたり、それに伴い血が流れますが、怒りやすいと肝の機能が失調し、逆に気を流す疏泄機能が失調するとイライラしやすく怒りっぽくなる傾向があります。
頭や顔に気が上昇するので、目が赤くなったり、痒みやくしゃみが出たりすると考えられます。
脾は、血を生成し、臓腑や血が所定の場所に留めたり、消化と吸収に関わり、飲食物を気に変化させて全身に必要な栄養を行きわたらせる働きと全身への水の運搬も脾は行っています。
これらが過剰に滞ってしまうとむくみや脾胃に負担がかかり脾の機能が失調してしまいます。
臓腑関係では大腸が関係し、西洋医学的な視点では、小腸より免疫系の細胞は少ないけれども大腸には莫大な数の腸内細菌が存在し、ビフィズス菌などの善玉菌が病原菌の増殖を抑えて体を守っています。
肺は、水の上源と言われ、鼻や皮毛(皮膚や汗腺)、呼吸に関与し、外邪(花粉やウィルスなどの外敵)から身を守る働き(衛氣)が存在します。
これらの器官は西洋医学的にも同じ働きをしています。乾燥に弱い肺は、そういう環境が続くとバリア機能が低下し、咳や肌にトラブルが生じると考えられ、鼻づまり、鼻水などの症状は肺の臓が大きく関係していると考えます。
東洋医学の五行説(論)では、肝と脾は相剋関係にあり、脾の運化作用が弱まると脾は肝の制約に耐えられずに更に弱まる(相乗)。
肺と肝も相克関係にあり、肝の疏泄作用が弱まると肝は、肺の制約に耐えられず弱まる(相乗)関係性があり、西洋医学で考える臓器の働きとは少し違っているのですが、面白いことに花粉症に関しては、西洋医学的な観点からも近い働きで考えることが出来るのです。
<東洋医学的治療>
東洋医学の鍼灸、按摩、指圧治療や漢方は、ゆっくりと身体に働きかけるので長期間の治療を続けることで花粉症などのアレルギー体質も変えていくことができます。
花粉症に有効なツボは、小鼻のすぐ両脇の迎香、両眉の中央点にある印堂、瞳孔の真下にある承泣、首の後ろを通る二本の太い筋の外側にあるくぼみ天柱と風池、親指と人差し指の間の付け根の間にある合谷などが鼻水、鼻つまり、頭痛、などの不快症状の緩和を助けてくれます。
花粉症に有効な漢方は、一番有名な小青竜湯が代表格です。 冷えた鼻を温め、水分循環を促し余分な水を体から排出することでアレルギー鼻炎や鼻水、鼻つまりの症状を改善します。
麻黄湯や麻黄附子細辛湯は、水のようなサラサラ鼻水タイプの症状の方、葛根湯加川芎辛夷は、鼻詰まりが強いタイプの症状の方に良いそうですが、漢方であっても組合せによっては副作用が出てしまいますので、漢方医やお医者さん、薬剤師さんの指導やアドバイスをきちんと受け、体質や症状の重症度に合ったものをきちんと選んでもらいましょう。
<予防>
花粉症には、原因抗原である花粉やハウスダストなどの除去と回避が一番です。
出来る限り体に取り込まないように、花粉の季節に入る前にマスクや花粉避け眼鏡の着用、衣類の花粉避けスプレーの噴射や干した洗濯物や布団はしっかり叩くなどで予防する工夫をしましょう。
そして、東洋医学には養生という考えや、治未病という観点から他に体内免疫バランスを整えて体質改善を図る根本治療がとても重要となります。
①食事の改善:甘いもの、揚げ物、刺激物、食品添加物の多い食品を控え、玄米を主食にし、発酵食品や乳酸菌、海藻類、食物繊維、ビタミン、ミネラルなどを摂取し、腸内細菌が喜ぶ腸内環境作りをしましょう。
②生活習慣:アレルゲンを体に取り込まないように外出後は直ぐに入浴し、部屋着に着替える、目や鼻洗浄を行う他に運動する習慣で体力をつけて免疫力を鍛えましょう。
③睡眠の質:寝不足は免疫やホルモンバランスを崩し易いので、規則正しい生活リズムをつくりましょう。
④住環境の整備:花粉以外にも部屋の中のホコリやチリなどのアレルゲンをこまめに掃除をして取り除いたり、洗濯は部屋干し、外に干した場合は、しっかりと花粉を払い落としてから室内にいれたり、柔軟剤使用で静電気の発生を抑え、花粉が付きにく鳴るような工夫をしましょう。
⑤ストレス解消:ストレスは自律神経を乱し、免疫力低下させ、ちょっとした抗原に対しても反応しやすくなってしまうので、趣味や運動などでストレス発散しましょう。
また、脱アレルギー体質への生活改善には、ポイント押さえたこれらの予防とセルフケアも組合せ行うことをお勧めします。
最近では、台座灸やシール鍼などを治療院やドラッグストア等で購入することが可能ですから、ツボの場所が分かりやすく書かれた書籍なども沢山販売されていますので、ご自身で手軽にセルフケア出来る良い時代になりました。
しっかりしたケアを行いたい、ケアしたいけど扱い方やツボの場所に不安があるという方は、お近くの鍼灸治療が可能な病院のお医者さんや鍼灸治療院の鍼灸師さんに正しい使用方法や効果、ツボなどを指導やアドバイスを貰ってみましょう。
まとめ
このように西洋医学での治療は即効性の効果がありますが、眠気が出たりのどが渇いたりと日常生活の大きく影響を与えてしまうことが多いです。
それに対して、東洋医学の場合は即効性は薄いですが、花粉の季節の2~3ヶ月ぐらい前から体質改善の鍼灸治療をしていくと症状を軽減または予防することが出来ます。
西洋医学と東洋医学どちらも活用してみるのをオススメします。