高血圧とは?
収縮期血圧と拡張期血圧が下記の診断基準をこえている場合を高血圧と呼ぶ。
高血圧症は持続的に上昇した状態をいい、一回のみの測定ではなく、日を繰り返しての測定によってなされる。
2019年の患者調査の概況によると高血圧の総患者数は993万7000人となっており、特に年齢が増すとともにその頻度は急激に増加している。いわば、国民病の一つである。
明らかな基礎疾患のない高血圧症を本態性高血圧と呼び、高血圧の大部分(90~95%)を占めている。
また遺伝的要因の関与は30~60%程度である。
一方で原因となる疾患が明らかなものを二次性高血圧または症候性高血圧症と呼ぶ。
「白衣高血圧」:医師に測ってもらうと緊張して通常よりも高値を示す現象。
「仮面高血圧」:診察室血圧は正常範囲だが、家庭での血圧が高値を示す現象。注意が必要。
大多数は無症状だが、高血圧が著しい場合は、肩こり、頭痛、耳鳴り、不眠、動悸や息切れなどを呈する。
西洋医学的の視点から
<原因>
本態性高血圧の原因は不明だが、食塩過剰摂取、肥満、アルコール多飲、運動不足、喫煙、ストレス、遺伝などが発症要因と考えられる。
また、二次性高血圧(症候性高血圧症)は原因として腎疾患(慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症)、内分泌疾患(原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫)、血管病変(大動脈狭窄)、薬剤性(ステロイドなど)などさまざまな疾患がある。
遺伝的に腎臓でのナトリウム排出能が低下している人は、過剰な塩分摂取があれば、腎血流量の増大によって尿中ナトリウム排出を増加させようとする。その結果全身の血圧が高く維持される。
安静時の血圧が持続的に上昇した状態を高血圧と呼ぶ。
<西洋医学的な治療>
本態性高血圧の場合は、ストレスや食事、生活習慣が発症要因であることが多いため、ストレスを溜め込まず、食事療法や運動療法などで予防や治療に繋がる。
二次性高血圧(症候性高血圧)の場合は基礎疾患を治療する。
また、薬物療法もあり、利尿薬、ACE阻害薬、α遮断薬、β遮断薬、Ca拮抗薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬などが用いられる。
<予防>
予防法としてはある程度の基準もあり
・塩分摂取制限: 1日6g以下
・適正体重の維持: 〈体格指数(BMI〔体重(kg)/身長(m)2〕25を未満を目標とする〉
・野菜・果物の積極的摂取: 飽和脂肪酸、コレステロールの摂取を控える。
・節酒: エタノールとして男性は20~30ml、女性は10~20ml/日以下
・禁煙
・運動療法: 軽強度の有酸素運動(動的および静的筋肉不可運動)を毎日30分、または180分/週以上行う。
などがあげられる。
東洋医学的の視点から
<原因>
高血圧症は主に、情志の失調、飲食不節、虚損などの要因と密接な関係があるほか、肝腎の陰陽のバランスの失調も原因となる。
①肝火による高血圧症
長期にわたる精神的緊張や情志の失調により肝鬱となり、それが化火すると肝火が炎上することにより高血圧症が起こる。
舌質は紅、舌苔は黄色、脈は弦数となり、眩暈、頭痛、耳鳴りなどの症状を伴う。
②痰濁による高血圧症
油っこいものや甘いものの偏食、過度の飲酒により痰濁が生じ、それが体内にこもると化火する。肝火の炎上性により肝風とともに頭顔面部に上衝すると高血圧症が起こる。
舌苔は厚膩、脈は滑濡となり、めまいや頭痛の他に、胸悶や食欲不振などの症状を伴う。
③陰陽陽亢による高血圧症
房事過多や老化などにより腎陰が不足し、そのために肝陰も不足して肝陽を抑えられなくなり、肝陽が亢進して高血圧症が起こる。
舌質は紅、舌苔は少なく、脈は弦細数となり、腰のだるさや健忘や耳鳴りなどの症状を伴う。
<東洋医学的な治療>
①②の場合は実証のため、痰濁の除去をはかり、また肝風を抑えます。
主に、足陽明、足厥陰経穴で風池、豊隆、足三里、太衝を選穴し、特に鍼治療にて瀉法を施します。
③の場合は虚証のため、陰の不足を補い、肝陽の亢進を抑えます。
主に、足少陰、足少陽経穴で風池、曲池、内関、三陰交、太渓を選穴し、足少陰経穴には鍼にて補法を施し、足少陽には鍼にて瀉法を施します。
<予防>
百会、内関、太衝、膻中、足三里などを心地の良い強さで3~5秒程度押すなどの、セルフマッサージを行う。
ゆっくりお風呂に浸かったり、よく睡眠をとるなど、副交感神経を優位にする。
入浴や音楽療法やストレッチやヨガなどを行い、ストレス解消をする。
などがあげられる。
また、予防的に鍼灸治療やマッサージ治療を行って血圧をコントロールすることも有効である。
まとめ
高血圧は全身の細動脈硬化や大血管の粥状硬化、心肥大をもたらし、脳出血や脳梗塞、心血管系疾患の主要な危険因子となる。
そのため、自分自身の両親が高血圧である場合や、『少し血圧が高いけど症状は何もないから大丈夫だ。』と安易に考えるのではなく、早めに病院で診察を受け、適切な治療をしていくことが大切である。
全ての方が薬物療法となるわけではなく、食事療法や運動療法といった生活習慣を見直すことが大前提である。
精神的なものも要因となるため、ストレスを溜め込みすぎず、また、西洋医学と東洋医学のどちらの面からもアプローチをしていくことで、健康を手にすることが可能である。